水の間⑤
その後、壁や床も一回り点検するが、どこにも仕掛けらしき物はない。
隙間一つ無いこの部屋は完璧な密室だった。
水はとうとう太もも辺りを超えた。
人が水が膝から上に浸かっただけで恐怖を感じることもあると言う。
今の状況では、誰かがそうなってもおかしくなかった。
案の定、隆也君がここでパニックを起こす。
「どうしたら、どうしたらいいんだよ。ここから出せよ!!」
壁をドンドンと叩き、破壊を試みる。
これに参加するはめになった理由が、笑い話になると言う物だったのだから、彼にとってこの状況は今この部屋にいる誰よりも溜まらないはず。
もう笑い話に出来る内容を遥かに超えている。
しまいに、彼は驚くべき行動に出た。
「隆也君っ! 何してるんだ!?」
プラグを手に取り、コンセントにはめようとしたのだ。
早くこの地獄から抜け出したいために取った行動だろうが、いくら何でも軽率すぎる。
俺は田村さんと一緒に力づくで、彼を止める。
「何すんだよ! もうコンセント自体に水が浸かってるのに電気が漏れてないんだから、電気が通ってないって言うことだろ!!」
確かに彼の言う通り、コンセントが水に浸かってるに関わらず、自分達は感電していない。
しかし、隙間一つない部屋と言う時点で、この部屋はかなりの科学技術が集約されているのが分かる。
それだけの技術があれば、プラグをさすまで、電気が流れないようにすることなどとても簡単な事に思える。
尚も暴れて止まない隆也君を落ち着かせるよう説得する俺
しかし、彼は留まるをしらない。
そして、ついに田村さんが切れた。
パシンッ!!!!
「いい加減にしてよ。こっちも泣きそうになるのを必死に堪えてるのよ。一人我が儘言わないで!」
思いっきり隆也君をビンタして、涙目ながら力強く田村さんは睨みつける。
流石、妹を助けようと動き回ってるだけある。
もしかしたらこの中で一番強いのかもしれない。
隆也君も年下の女性に叩かれたからか、我を取り戻し力が抜けたし、もうおさえる必要はなさそうだ。
「どうしたら、いいんだよ……」
隆也君はポトリと言葉を落とす。
「とにかく時間ギリギリまで必死に頑張ろう。そこで分からなかったら、仕方ない。俺がある案を2人にだす」