三日月⑨
次の日から私は学校に通いはじめた。
病院で療治生活も勧められたが、やはり残された命は楽しく過ごしたい。
友梨や友達達と笑って過ごしたい。
そう、私の本能が常に私自らに向かってささやいていた。
「恋歌、もう大丈夫なの?」
いつも私を心配してくれる友梨
私は「大丈夫」とピースするがいつかは話さないといけないという考えが生まれてもいた。
もし言わずに死んでしまったら死んだ後に怒られそうだ。
「そう。ところでさー、この前病院にいた男とはどういう関係なの? わざわざ見舞いに来てたことを考えると結構仲よさ気だけど……」
――神崎君、私の好きな人だ。
今まで気づかなかったけど、この前死を宣告された時、初めに顔が浮かびいつの間にか好きになっていたと気づかされた。
人を好きになるのは止めようとしてたはずなのに……
「ただの友達だよ、彼とは……」
私は自分の気持ちを押し殺し、友梨にただそう告げる。
友梨はしばらく私をジーッと見ていたがすぐに切り替えた。
「そうなんだ。じゃあいつ学校来るとか知ってるの?」
「うん、もうすぐ神崎君手術するんだけどね……術後の経過がよかったらすぐに来れるって」
私はこの前聞いたことをそのまま伝える。
「そうなんだ。それにしても恋歌、彼の話するとき溌剌としているね」
「えっ……そうかな」
私は後頭部を擦りながら必死に誤魔化す。
友梨の性格上、私が神崎君のことを好きって知られたら絶対応援されちゃうのは間違いない
そんなのダメ!
疑いの目をかけてくる友梨に対して私はポーカーフェースを施す。来るなら来いだ。
「ふーん、まぁいいや。じゃあまたね」
友梨はしばらくこちらをじーっと見ていたが、もうすぐ先生が来るので、自分の席へといそいそと戻っていった。
はぁー何とか誤魔化せれたようだ。
そして放課後
何事もなく学校を終えることの出来た私はママの待つ場所へと足をむけた。
もう私の登下校は送迎つきだ。
どこかのお嬢様にも感じられるこの行為--正直なところ私はこれが少し嫌だった。
なんせ、もう好きに行動が出来ないし……帰りに神崎君に会いに行くこともできない。
ママは私のためにやってくれてる事でも自由がなくなったみたいで嫌だった。
そしてそんな日々が過ぎていき、明日は神崎君の手術日前日
私はママに悪いと思いながらもここばかりはお願いをすることにした。
「ママ、お願い。今から病院寄ってくれないかな」
私がそう言うと言い方が悪かったのかママは慌て始める。
「どっか悪いの!? 待ってて今病院行くから」
「あぁー、違うの。ただ明日友達が手術するから応援したいの!!」
「友達?」
ママは私の言い分を聞くと、しばらく何かを考え、車を病院にむけた。
「分かった。病院に行けばいいのね」