白い部屋③
一言に言うとこの部屋は快適すぎた。
外部との接触と見なされるインターネットが使えないのは些か残念であるが、それを補う魅力がこの部屋にあった。
壁の一面が開き、出てくる豪華なご飯。
適度に体を動かせるくらいの大きさはある部屋。
大きな風呂に大きなトイレ。
そして、何より事前に持ち込むことが出来た多数の娯楽品。
僕は持ってきたゲームを片っ端にクリアし、漫画を片っ端に読破していく。
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一ヶ月後
僕はこの生活に飽きが出ていた。
最初の頃は本当に楽しかった。誰にも邪魔されず、自分がやりたいことが出来た生活。
始めの方こそ、本当に夢のような毎日だったんだ。
でも、日が経つにつれその生活は僕を追い込んでいく。
毎日の料理は未だに美味しく頂けてる。
まだ、クリアしていないゲームもあるし、まだ読破していない本もまだ存在する。
しかし、どれだけ遊んでも虚しさだけが残る。
クリアしても誰にも自慢できないゲーム。
美味しい料理を食したことも、漫画の感想も誰とも共有することが出来ない。
ここでの生活は全てが自己完結してしまってる。
元々引きこもりの僕にとって、孤独は対した問題ではないと思っていたが、そうではなかったみたいだ。
僕と軽いやり取りしかしない両親
ネットで、僕のようなニートを叩く人々。
そして、出会わないながらも趣味を共有していたネット上の人々。
それらの関係ないと思っていたことが、どうでもいいと思っていたことが、僕の生活を充実させていたのが、今になって分かる。
どんな人間でも人と一切関わらずに生きるなんて精神的に不可能だ。
うさぎは孤独で死ぬというが、人間も遠からずそうに違いない。
僕はもうすでに発狂寸前だった。
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それから再び2週間
僕はもうこの生活に耐えられなく、四六時中叫ぶようになっていた。
持ってきたデジタル時計に示す今日の日付はまだ終了の日程には遠くかけ離れており、とてもじゃないがそこまで持つとも思えない。
一言だけでもいいから、とにかく誰かの言葉を聞きたかった。
僕の叫び声が部屋の中を木霊する。
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さらに2週間
僕の喉はもうカラカラに枯れていた。
何度か血反吐を吐いたが、それでも実験を終わらせてくれない研究者達
たしかにそういう契約だったが、これは人権を無視しているのではないだろうか?
報酬はいらないし、使った前金を返すといっても決して開かない入り口に僕は諦めの境地に入っていた。
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さらに一ヶ月後
もう外部との連絡は一切出来なくなった。
この前、ついに向こうから見ているだろう監視カメラを全てぶちこわしてやった。
そうすれば中の様子を知りたいがために誰かが入ってくると思ったが、そんな甘くはなかった。
よし、次は食事の配送システムを壊そう。
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さらに2週間。
ここの施設の人間は人であって人ではない。
食事の配送システムを壊したら、本当に食事の配送がなくなってしまった。
今は部屋にある水道水で生き永らえているが、それも時間の問題に違いない。
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さらに一ヶ月後
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白い部屋にはもう誰もいなかった。
(完)