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hiro-shugo’s diary

グダグダ雑談日記

水の間④

小説

言うのが遅すぎる。

もっと早く言えば助かっていたのに……

まぁこれが彼女の言う通りゲームなのならば、このタイミングで言うのは決められていたに違いないが、心中は不満で一杯だ。


俺は心の中で彼女に文句を垂れながら、耳を更に傾ける。


『その2つが脱出の条件です。それ以外に脱出の術はないと考えてください。しかし、これでは溺死する寸前でプラグを差し込めばいいだけのこと。それでは面白くないので更に条件を付けさせていただきます。それは時間制限――部屋の真ん中に引かれている赤い線に水が達すると、コンセントにプラグを差し込んでも、入口は開きません』


そんなの関係ない。

今の俺達じゃあ時間制限があろうと無かろうとどっちみち死ぬ。


落胆をあらわにする俺だが、彼女の次の言葉に希望を少しだけ見いだせた。


『尚、コンセントだからと言って必ずしも電流が流れているとは限りません。又途中で水が入ってくる量が増えることはありませんが、減る可能性、また止まる可能性、共に考えられます。コンセントに電流が流れていない場合はプラグを差し込んだのを確認し次第、こちらで入口を開けますのでご安心を』


要するに彼女の言い分は、ど

ちらかに生き残る道があるから、それを模索しろと言うことか……


果たしてこれまでの説明の中にヒントはあったのか?

それともただ運で決まるのか?


分からないことは多いがここは慎重に考える必要がある。


『では説明はこれを持って終了とさせていただきます。死なないよう精一杯頑張ってください』

 

プチッ

電源が切れ、液晶は再び天井へと上がっていく。


天井の一部がパカッと開き、液晶は手の届かない所に消えた。


「あのー……どうします?」


ただ呆然として、水が流れている音のみが部屋を支配している。そんな空気の中、最初に声を上げたのは田村アカリさん。


目は明らかに潤んでいて、泣くのを我慢しているのがよく分かる。


しかし、同時にここから抜け出して、妹を助けるという強い気持ちが伝わって来る。この中で一番覚悟をしているのは彼女なのかもしれない。


「どうしようかって聞かれてもな……とりあえず隆也君だっけ? 肩車するから先ほど液晶画面が消えていった天井をチェックしてくれる? 可能性は薄いが首を突っ込めるスペースくらいなら空いているかもしれない」


「あ……はい」


俺の言う通り、天井をチェックし始める隆也君


まだ水がひざ元にすら来ていないため、落ち着きを保てられている。


しかし、これがデッドラインである赤線に近づくにつれ、アカリさんはともかく金堂君は確実に慌て出し、最後には自我を失うだろう。


そう言う俺も自分自身を保てるか分からないが……


とにかくまともに脳を動ける間に調べる所は調べてお

いた方が良さそうだ。


決断するための猶予はまだ20分以上ある。


「駄目です。天井は開きそうにありません」