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hiro-shugo’s diary

グダグダ雑談日記

水の間⑩

俺は全身ビショビショの濡れた体で、周りの目を気にしながら家に帰ってきた。


扉は鍵がかかっておらず、そのままスッと開く。


眠ってしまった時間を入れて約半日の外出。

無用心と言えば無用心だが、眠らされたのだから仕方ない。


それにあれだけ大規模な仕掛けの部屋を作っているくらいだ。


きちんと泥棒が入らないか監視くらいはしてくれていただろう。


俺は念のため部屋が荒らされていないか確認した後、シャワーを浴びるため、脱衣所へと足を進める。


濡れた衣服を洗濯機に放り込んだ後、お風呂場に入り、体を温める。


今思えば、よく生きて生還できたものだと我ながら感心する。


あの2重の罠を見破った時は本当自分を褒めたたえたい気持ちになったもんだ。


充分と体を温めた俺は脱衣所で新たに用意した服に着替え、髪の毛をドライヤーを使って乾かせる。


そして、一段落ついたところで、あの進行役が言ってたお金を確認すべく、部屋に戻る。


あいつが言ってたことが正しいのならば、ある場所はパソコンの前――俺がこの殺人ゲームに参加するはめになった原因のある場所だ。


案の定、パソコンの前には置いた記憶もない、木箱が置かれていた。

 

その箱を開けてみれば、あるはあるは大量の万札。


一束100枚ぐらいの厚さだろうか? それが10組もある。


数えるのは流石に骨が折れるため、しないが先ほどまでやっていたことが事実であるならば、これは1000万あるのだろう。


現金でこれだけのお金を見たことは今まで一度もなかった。


「うん? これは……」


そして俺は札束の下に敷かれていた一枚の紙を見つける。

最初は万札を綺麗に保つために敷かれた物だと思ったが、よく見ると違う。


何やら黒色のペンで文字らしき物が書かれている。


俺はそれに目を通す。


―――――――――――

拝啓 桑田輝政様


この度のゲーム――【Conflict】からのご生還おめでとうございます。


このゲームは日本中の大富豪がスポンサーで行われている物で、桑田様に支払われた賞金もそこから支払われています。


そして、そのスポンサー様達がお金を出してくれる理由


その一つが優秀な人物の発掘です。


近年勉強が出来ても、ピンチになると頭がこんがらがり、何も出来ない人材が増えています。

しかし逆境でも充分な力を発揮できるかなど、通常の面接では把握できません。そこで、このようにピンチに力を発揮できる

か確かめるゲームを用い、優秀な人材を探しているという訳です。


そして今回のゲーム――水の間での貴方様の活躍を見たいくつもの企業があなたをスカウトしております。


もし転職や就職を希望しているならば是非参考にしてください。


・○○会社
・□□コーポレーション
・△△独立法人

…………
…………

・ゲーム【Conflict】運営・ゲーム【Conflict】賭博場
・警察(刑事課)
・潜入捜査官


尚、このゲームについては他言無用です。

3日後に、この紙を回収しに係の者が参りますので、それまで大切に保管下さい。

紛失した場合や譲渡した場合、こちら側で適切な処置をしますので悪しからず。


また、就職を希望する場合その係員にお申しつけ下さい。


From ゲーム【Conflict】管理部

―――――――――――

 

 

なるほど。

おれはその紙を最後まで読み取り少し納得する。

就職の案内が来ていたのはいずれも大企業と呼ばれる会社や巨大組織の一員。


つまり、それらのトップクラスの人間がこの件に絡んできているというわけだ。


それならば、あの入り口のない摩訶不思議な部屋など、いくつかのありえないような現象にも少しは納得できる。

しかし……

俺は知ってはいけないことを知ってしまったのは間違いない。

数々の殺人ゲームを大企業や警察が黙認どころか推奨している事が分かってしまったのだから……

おそらく、誰か他人にこの事実を漏らしたのならば、その相手を含め、俺は消されるだろう。


いや、喋らなくても俺は向こう側からしたら、情報漏洩につながる危険人物。

今後、何らかの方法で常に監視されるのは間違いない。


それは出来るだけ避けたい。

ではどうするべきか……


「向こう側の信用を勝ち取ればいいのか……」


この就職の案内に乗っかかる。俺自身が向こうの組織に加入すれば監視の目は格段にへるはずだ。

それに何より……

 


こんな組織があっていいはずがない。人材発掘というレベルを遥かに超えている。


しかし、今conflict事務局と対峙しても、すぐ殺されるのは目に見える。

まずは情報だ。情報を手に入れ、上手くそれを利用するしかない。


そのためには敵陣に侵入するのが手っ取り早い。conflictという組織に加入し、内部からその組織を破壊する。


俺はconflict事務局への就職を決意するのであった。