水の間⑦
しかし何か引っ掛かる。
いくら何でも安直過ぎないか?
アナグラムの存在に気がつかなかった俺が言うのも何だが、参加者の半分以上が死んでるこのゲーム
隆也君の考えを否定するわけでは無いが、まだ何かあるような気がする。
アナグラムは有名な手法。三人一組のゲームならもっと多くの人が気付いてもおかしくないはずだ。
俺は喜ぶのもつかの間
すぐに思考をさらに張り巡らす。
水は止まらない
一体何処に引っ掛かっていると言うのか?
俺は天井、プラグ、水と順番順番に部屋を見ていく。
そして俺はある所に目が着いた。
――もしかして!!
「隆也君、ちょっとそれ差し込むの中止っ!」
俺は隆也君からプラグを奪い取り、それの先で壁を引っかく。
危なかった。俺の推測が間違いでないならば、もしあのまま差し込んでいたら俺たちは死んでいた。
あとボーダーまで6センチほど
まだ間に合う!
「何するんですか!?」
隆也君が叫んで来るが、今は時間がない。俺が思いついたこともあくまで推測の域。その推測が正しいか検証する必要がある。
俺は出来るだけ簡単に伝えたい事を口にする。
「ちょっとある可能性が出て来た。俺が
合図したらそこから1分、心の中で数えてくれ」
「ちょっと、どういうことだよ!?」
「説明する時間がない。頼む!!」
俺の必死の形相に隆也君が怯む。
あとボーダーまでは約5センチ
「スタート!」
俺は合図を送ると同時に自らも1分を測り始めた。
(1……2……)
俺はゆっくりと60を数えていく。
脈拍が早い人は一般的に時間を早く数え、遅い人はゆっくり数えるという。
今の現状、脈拍が速くなっていないわけがない。
ここで速すぎる時間計測は命取り。出来るだけ自分を落ち着かせ、一つ一つ丁寧に数えていく。
(30……31……)
一分まで残り半分。
水かさは少しずつだが、残酷なことにも増えていく。だが同時に自らの予想は確信へと変わっていく。
(43……44……)
「一分です」
(45……)
「俺も!」
しかし油断は禁物。1度決めた時間だ。とにかく最後まで測り続ける。
流石、ゆっくりを意識しているだけあり、数えるのが遅い。
いや勿論、隆也君達が数えるのが早かったという可能性もあるのだが、そんなことは些細なものだ。
2人はすでに一分を数え終え、待つ形となり、そわそわとした表情をしているが、だからと言って数えるスピードは早めない。
とにかく、まだ若干にだが、壁には余裕がある。
俺はそれを確認した後目を瞑り、さらに慎重に数を数えていく。